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#2「釣り好き」で切り拓いた漁師への道 【糸島しごと】

更新日:2024年2月5日

#2 「釣り好き」で切り拓いた漁師への道

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【記事(PDF版)はこちら】(PDF:950KB)

吉田悠さん
 Yoshida Yuu

漁師

 1992年、福岡市城南区生まれ。医療系大学を卒業後、精神保健福祉士の資格を取るも、大学時代に出会った釣りの楽しさを原点に、漁師の道を選んだ。25歳から糸島市志摩の福ノ浦漁港を拠点に漁を行っている。



日本有数の漁場である玄界灘に面した糸島市は、カキやタイ、サワラなどの海産物が豊富で、海沿いの各所に漁港があり、漁を生業とする人がいる。
漁師の多くは地元の出身だが、吉田悠さんは福岡市城南区出身。吉田さんは、医療関係の大学に進むも「自分がやりたいのは漁師だ」という思いが消えず、今の職を選んだ。
「自分はそんなに深く考えていないですよ」とからっとした笑顔で謙遜気味に語る吉田さんに、糸島での漁師としての働き方や暮らし、将来の展望を聞いた。

「漁に出るのが楽しい」令和の漁師の働き方


漁師という仕事について教えてください。どこでどのように働いていますか?



漁師って夜中に漁に出て朝帰ってくるイメージがあると思いますが、自分は朝8時とか9時に漁に出ることが多いです。糸島漁協に所属していますが、漁師は個人事業主だから、いつどうやってどんな漁をするかは自由です。糸島半島の西側にある福ノ浦漁港を拠点に、船から釣る釣り漁、潜って取る海士(あま)漁、ワカメやモズクの養殖など季節や天候によっていろいろな漁や養殖をしています。

自分の場合、釣り漁をするときは船で15分くらいの近海にしか行かない。海士漁も午前11時から始めるという漁協の決まりがあるので、朝出て夕方帰るため普通のサラリーマンとあまり変わらないですね。収入は大人一人が生活する分は稼げているので十分だと感じています。

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漁具が積まれた吉田さんの船「悠丸」。いつも1人で漁に出る


漁師をやるうえで大変なことは?



取ったものを自分で売らないといけないことです。漁協が買い上げてくれるわけではないので、自分で売り先を確保しないといけない。だから、自分で漁獲物に付加価値をつけ、消費者がおいしく食べられるような工夫が必要だと思っています。

漁獲物が一緒でも、漁をする場所、漁の仕方、魚の処理の仕方、配送距離などによって魚のおいしさは全く違います。例えば同じ糸島産の魚でも、餌となる海藻が豊富な岩場で取れた魚は、他の場所で取れた魚よりおいしい。でも、そういう場所は網が引っ掛かりやすいので漁師は嫌がるんです。魚の処理の仕方も同じように、漁師によってうまい下手はあるし、丁寧さも違います。消費者にそのような違いを知ってもらい、買うときの選ぶ基準になればと思います。

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吉田さんが拠点とする福ノ浦漁港。
糸島市には12か所の漁港がある


漁師をやっていてよかったと感じるのはどんな時ですか?



海で漁をしている時です!

自分は釣りが好きで漁師になったので、漁師は趣味の延長なんです。いろいろな漁の中でも、素潜りをしている時が一番楽しい。春はムラサキウニ、夏はアカウニ、サザエやアワビは1年中取れます。糸島はカキの養殖や船から大きな網でたくさんの魚を一度に取る吾智網(ごちあみ)漁が盛んですが、「自分で取る」感覚のある漁がしたかったんです。今はそれができている。天候や自分の気分次第で漁に出ないこともありますし、海が時化(しけ)の時は休みです。好きな仕事を楽しんでいて休みも多いので、傍から見たら「良い生活をしている」と思われるんじゃないでしょうか。

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吉田さんが海士漁で取ったアワビを満面の笑みで見せてくれた

きっかけは釣りの楽しさ。漁師として独り立ちするまでの軌跡


漁師になろうと思ったきっかけは?



大学で釣りの楽しさを知ったことです。

宮崎県延岡市の大学に行ったのですが、すごく田舎で遊ぶところが何もないんです。それで友達と釣りを始めました。延岡の海は波止場からでもアジやチヌ、キスなどがたくさん釣れるから楽しくて。休みの日は必ずといっていいほど釣りに行っていました。そこで知った釣りの楽しさが、漁師になった原点ですね。


大学卒業後、すぐに漁師になったのですか?



いいえ。釣りは趣味でしたから、その頃は漁師になろうとは本気で考えていなかったです。大学卒業時に精神保健福祉士の資格を取りましたが、就職はせず、医学部受験に向けて予備校に通いましたが、1年経って「これ以上続けられない」と思いました。

1年間勉強漬けで我慢していた分、「釣りがしたい!」という思いが膨れ上がって。漁師を仕事にしたいと思ったのはその頃です。あまり深く考えず、「釣りが好きだからそれが仕事になれば」と思いました。


新規に漁業権を得るのは難しいと聞きます。移住者の吉田さんはどうやって漁師になったのですか?



簡単ではなかったですね。漁業権は個人ではなく漁協が持っているので、漁をするには漁協の許可がいるんです。福岡県内、県外を含めて漁師になれる場所はないか探しました。漁師を目指す人に助成金を出している漁協に直接話を聞きに行ったけれど、「漁師の跡継ぎしか受け入れたことがなくて…」「大卒の人は今までいないから…」などと断られました。

漁師になりたい一心で、福岡県の水産局水産振興課に協力をお願いしました。糸島漁協に一緒に行ってもらい、そこで師匠となる丸田さん(丸田陽一さん、漁師)に出会いました。丸田さんが私の研修を引き受けてくれて、漁師として1人前になるために必要なことを1年かけて教えてくれました。

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「おもしろいやつがおる」と研修を受け入れた丸田さん(右)。
今でも一緒にフトモズクの養殖を行っている


研修が終わったらすぐに漁師になれるのですか?



漁協の組合員になって漁をできるかどうかは、研修先や漁協の資格審査に通らなければいけません。漁協や漁港によっては3年ほど研修するところもあるそうです。

自分の場合は、師匠の丸田さんの後押しもあり、25歳の時に漁協の準組合員になりました。準組合員になれば、一人で漁ができます。丸田さんに出会えたのは本当に運が良かったと思います。


今後、糸島に漁師として移住するには?



現在、水産業界では漁師の担い手は減少傾向で、自分の子どもに跡を継いでほしいと考える漁師もいます。しかしながら、同時に水産資源も減ってきています。一人当たりの漁獲量が減ってしまう現状に、跡継ぎではないまったく新規の人を積極的に受け入れてくれるところは少ないのが現実です。そんな中、運やタイミングが良かったこともあって、自分は漁師になることができました。

自分は釣り漁や海士漁をしたかったので、カキの養殖業は選択肢になかったけれど、糸島漁協では「カキ小屋なら受け入れ先がある」という話もありました。人手が必要な漁協や漁港もあると思うので、まずは市や漁協に話を聞いてみるのが良いと思います。

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いかだの下にかごを吊るし、取ったアワビを大きく育てている。
1つのかごに20~30個のアワビが入っていた

自然豊かな糸島で、これからも漁師を続けていきたい


糸島で漁師をする良さは?



ひとつは自然です。糸島は山が近いので、山の豊富な栄養が海に流れ、海藻が育ち、魚や貝も育つ。カキが有名なのはそのおかげです。

もうひとつは、漁師にとって他の地域にはない強みがあります。それは直売所があることです!JAファーマーズマーケットにおいて売り上げ日本一を誇る「伊都菜彩」と漁協直営の「志摩の四季」は、本当にありがたい存在。魚市場に魚を卸す際にはある程度まとまった量が必要なのですが、直売所なら1匹から売ることができます。

自分のように一人で釣りや素潜りで漁をしている身にとっては、大量の魚を一度に卸すことは難しい。水産資源を守り漁業を持続可能にするためにも、必要な分を少量で売る直売所は適しているのではないでしょうか。

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山も海もある糸島市。
豊かな自然環境を求めて移住する人も多い


これからも糸島で漁師を続けていきますか?



はい。糸島で漁師を続けていきたいと思っています。現在は漁場から少し離れたところにアパートを借りていますが、ここで漁師を続けていきたいので、漁港に近い家を探しています。結婚して、奥さんも一緒に海に潜って漁をしたいなあという思いもありますが、環境が変わってきているので、漁師を続けられるかは分かりません。

海に入れば分かりますが、海藻も魚も減っているし、ウニには身が入っていない、サザエの身も小さい。漁協や漁師はもちろん、海に関わる誰もが考える必要があると思っています。糸島には協力してくれる料理人や企業さんがいて、いろいろな取り組みを進められています。自分も小さい魚や貝は取らない、稚貝を放流するなど、漁師としてできることをしていきたいと思います。

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何のゆかりもつてもない環境で、「釣りが好き」という思いから糸島市で漁師になった吉田さん。好きだからこそ、移住してきたからこそ、糸島の自然の貴重さを感じ、守りたいという思いが強いのかもしれない。

(2023年11月取材、文=南明日香 写真=渡邊精二)


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