【SDGs認知・共感促進事業】志摩中学校の取組を取材しました！

糸島市は令和5年度に「SDGs未来都市」に選定され、「糸島市SDGs未来都市計画」に基づく取組を推進しています。SDGsの達成には、市民・団体・企業など、皆さん一人ひとりの行動が必要不可欠です。

そこで、令和6年度から令和7年度にかけ、「SDGs認知・共感促進事業」を実施することとしています。
市内で活動する市民・団体・企業等のSDGsに関する取組を取材し、情報発信することで、SDGsに関する取組の“認知”と“共感”を促し、SDGsに対する市全体の意識を高め、一人ひとりの行動変容につなげていくことが目的です。

令和6年度は、市内の各小中学校における取組を取材しています。
「SDGsとよく聞くけれど、具体的になにをすればいいの？」と疑問を抱かれている方も、今回発信していく取組を参考に、身近な課題の解決に向けた行動につなげていただければと思います！

• 「SDGs未来都市」選定時のページは、こちら

【志摩中学校】3年生の力を結集した模擬会社「おいも～ず」。商品完売の裏側。

海と山、そして田畑が広がる糸島市ではさまざまな農産物が育てられており、近年「糸島野菜」という名称で注目されています。そんな糸島市北西部に位置する志摩地域の、北に幣の浜、南に可也山という自然豊かな場所にあるのが志摩中学校です。

自分たちで育てた芋を地元スーパーで販売

2024年12月13日は、「おいも～ず」の生徒たちが待ちに待った芋の販売日当日です。13時半を過ぎた頃、生徒たちは自転車で会場に到着しました。あいにくの曇り空のもと、Aコープ志摩店の駐車場に集まったのは同校3年生の総勢38名です。

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  生徒たちは手際よく準備を開始

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  手作りのPOPをテーブルにセット

テント設営から呼び込みまで生徒が実施

まずは店舗の外に大型テントを立ち上げます。テーブルをセッティングし、次々と商品を運び込みます。

今回販売するのは、校庭で育てた安納芋、紅はるか、さらにそれらのサツマイモを加工したチーズケーキです。サツマイモは1kg350円、キズありのサツマイモが200円。「志摩のお芋ケーキ」は、栽培したサツマイモの中でもサイズが小さかったものなどを、志摩桜井の農家兼ショップ「手造り工房爽風（そうふう）」さんに加工を委託した特製のチーズケーキです。

もうすぐ販売開始予定の14時。生徒たちの準備をする手にも力が入ります。販売開始前からテントの傍にお客さんが並び始めました。一方、呼び込み担当の生徒たちは、お手製の旗を持って道路に面した場所まで移動します。

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  サツマイモの種類ごとにコンテナに仕分け作業

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  テントの横にはお客さんが列を作り始めていた

いよいよサツマイモの販売スタート！

準備が整ったところで、販売担当の生徒の声が響きます。「お待たせいたしました！これより志摩中学校、サツマイモの販売をスタートします！」

並んで待っていたお客さんが次々とテントの売り場に入っていきます。今回、Aコープに集まった生徒たちは、模擬会社「おいも～ず」のうち、「販売開発部」の生徒と「生産部」、「人事部」の一部の生徒です。

お客さんの注文を取って、商品を渡すのは「販売開発部」の接客担当、在庫管理をするのは「生産部」、さらにお金を受け取って管理する経理担当もバックに控えています。

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  販売開始と同時にお客さんで溢れるテント

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  接客担当は、笑顔でお客さんとやりとり

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  購入してくれたお客さんに手作りメモ帳をプレゼント

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  会計係。ケースを色分けして間違いないように管理

商品は全て完売！喜びとやりがいを実感

販売開始から30分が過ぎた頃、まずは正規品の「安納芋」が売り切れました。続いて「紅はるか」や傷ありのお得品と、生徒たちが丹精込めて作ったサツマイモが次々と売れていきます。最後に特製チーズケーキが売り切れ、1時間も経たずに本日用意していた商品は見事完売。

接客担当の生徒が、呼び込み担当の生徒に声を掛けにいき、生徒が全員戻ってきたところで、生徒のひと際大きな声が響きます。「商品全て完売しました！」。同時に全員から歓声が沸き上がりました。

途中、傘が必要なほど雨が降りましたが、くじけずにそれぞれの役割をしっかりとこなす生徒たちの姿がとても印象的でした。

今回同じ時間帯で、福岡市にあるイオンモール福岡伊都店内の「無印良品」でも、「おいも～ず」の商品を販売しました。そちらも生徒たちの働きにより、無事完売。テントやテーブルを片づける生徒たちにもそのうれしい報告が届き、さらに歓声があがりました。

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  笑顔で頑張った接客担当の生徒たち

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  「完売しました～！！」と喜びいっぱい

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  片付けでもチームワークを発揮

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  販売終了後、駆けつけてくれた「爽風」さん

生徒たちの声

副社長／生産部

• 「立候補で副社長になりました。主に生産部の全体を見ていて、畑の状態やサツマイモの生育状態を確認して生産部の部長と打ち合わせを行ってきました。悪天候で畑のうねに水が溜まり、苗がダメになった時は落ち込みました。でも仲間と力を合わせてやり直し、無事販売できる芋が出来上がって安心しました。サツマイモが全部売れて本当にうれしいです。「おいも～ず」の社訓は1笑顔でおもてなし2地域に貢献3全員の力で作る4安心安全5愛情を込める。一人ではくじけてしまいそうなことも、チームで頑張ればやり遂げられると思いました！」

副社長／人事部

• 「僕も良い経験になりそうと思って、副社長に立候補しました。社長1名、副社長3名が総務部にいて、さらに僕の担当は人事部です。畑の写真を撮って学校へ報告したり、名刺を作ってPR活動をしたり、広報の仕事もこなしました。全体を見て、足りないところをフォローするのが今日の僕の役割でした。最初はバタバタしましたが、次第にみんなが流れを把握して、スムーズに対応できるようになりました。大変だったけれど、みんなとやれて良かったです。この経験が将来役に立つとうれしいです。」

先生インタビュー

3年生担任の鎌田先生に話をうかがいました。

今回の授業（活動）の目的・ねらいを教えてください。

• 一番のねらいは、生徒の主体性・自主性を育てていくことです。そして、働くことの楽しさと大変さを感じてもらうことも、大きな目的になっています。
  さらに、全国的に社会問題となっている耕作放棄地について活用方法のモデルを提示し、その解決に向けて考え、活動しています。生徒たちが自分たちで野菜を育てることを通じて、理解を深めてくれればと思います。

今回の授業を含め、どのような実施計画になっていますか。

• 2年生の後半から、働く人の講話を聞くなど、模擬会社設立に向けて下準備を進めます。
  3年生に進級した4月、すぐに組織作りに入ります。全133名の3年生が、生産部・人事部・販売開発部の3部門に分かれて企画を練り、活動を開始します。生産部は畑の管理と農作物の育成、販売開発部は店舗での販売など、しっかりと役割分担を行っています。販売後は各部門で反省点をあげて、フィードバックを行い、来年度に繋げていく予定です。

どのような背景があって取り組んでいるのでしょうか。

• 以前は職場体験を実施していました。それがコロナ禍で実施できなくなり、実際に働く経験を何らかの形でさせてあげられないかと検討した結果、この「おいも～ず」の活動が始まりました。2年前は校内の花壇で野菜を育てました。昨年は近隣の地域の方にご協力を仰ぎ、休眠畑をお借りしてサツマイモを育てました。外部での販売も昨年から始まった試みです。そして、今年は校内に畑を作ることになりました。そこは生徒だけでは難しい点もありますので、農家の保護者さんにお願いしてトラクターを入れて一から畑を作り、生徒たちも鍬を持ってうね作りから参加。メインは芋畑ですが、オクラや枝豆などの夏野菜にも挑戦しました。

この授業をすることで、SDGsのどの目標達成につなげたいと考えていますか。

• 「8.働きがいも経済成長も」です。また、「15.陸の豊かさも守ろう」にも繋げていけると思います。
  働きがいという観点では、3年生全員が何らかの仕事や役割を担ったので、十分に繋げられたと思います。また、自分たちの手で畑を作り野菜を育てた経験は、目標の15にも繋がるはずです。日頃、自分たちが食べている野菜には、たくさんの苦労が詰まっている。その大変さを知るきっかけになればと思います。糸島は自然豊かな場所ですが、それが決して当たり前ではなく、守っていくべきものだと学んでほしいですね。

学びを通して、子どもたちに最も期待することは何ですか？実際に今回の手応えはいかがですか。

• 生徒たちは今回の活動を通して、何倍も成長したと思います。2年生の時、「早く大人になりたいか」「仕事は楽しそうか」といった質問をしたことがあります。6割ほどは「働きたい」との答えでしたが、「子どものままがいい」「働くことは不安」といった声も聞かれました。
  今のうちに仕事の楽しさややりがいを少しでも味わってほしい、皆でやり遂げる充実感を味わってほしいと考えていました。そのねらいからいえば、手応えは予想以上でした。失敗や課題も多くありましたが、それも社会に出る上では必要な経験です。生徒たちは、まずはきちんと分担して、主体的に動くことができました。例え気が進まないことでも、全体のために動くことの重要性を知りました。そして何より今日の生徒たちの顔を見て、大きな達成感を得ることができたと実感しました。

この授業以降、SDGsの取り組みはどのような展開予定ですか。

• 次の総合の時間で決算を行います。「おいも～ず」の活動の総まとめです。3年生はここでひとまず終わりとなりますが、次は2年生にバトンタッチする役目が残っています。この活動が志摩中学校の伝統になるよう、継続していけることを願っています。