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【SDGs認知・共感促進事業】前原東中学校の取組を取材しました!
更新日:2025年3月27日
糸島市は令和5年度に「SDGs未来都市」に選定され、「糸島市SDGs未来都市計画」に基づく取組を推進しています。SDGsの達成には、市民・団体・企業など、皆さん一人ひとりの行動が必要不可欠です。
そこで、令和6年度から令和7年度にかけ、「SDGs認知・共感促進事業」を実施することとしています。
市内で活動する市民・団体・企業等のSDGsに関する取組を取材し、情報発信することで、SDGsに関する取組の“認知”と“共感”を促し、SDGsに対する市全体の意識を高め、一人ひとりの行動変容につなげていくことが目的です。
令和6年度は、市内の各小中学校における取組を取材しています。
「SDGsとよく聞くけれど、具体的になにをすればいいの?」と疑問を抱かれている方も、今回発信していく取組を参考に、身近な課題の解決に向けた行動につなげていただければと思います!
- 「SDGs未来都市」選定時のページは、こちら
【前原東中学校】地域の人たちと連携し、規格外イチゴの商品化にチャレンジ
前原東中学校は、昔ながらの田園風景が広がる一方で、住宅地もある多様性に富んだ地域に位置しています。
地元の農業体験や環境保全活動など、地域の特色を生かした学びを重視し、中学2年生は起業家教育の一環として、クラスごとに地域課題に着目した取り組みを進めています。
2年6組の生徒たちは、規格外で出荷できないイチゴを活用した加工品の開発・販売に挑戦しました。校区内のイチゴ農家や糸島農業高校など、地域の協力者と連携して出来上がったイチゴの加工品を、令和6年11月の学校バザーで販売する様子とともに、起業家教育のねらい、2年6組が活動してきたこと、生徒たちの声をお届けします。
起業家教育で「地域貢献」と「廃棄食材の削減」に取り組む
起業家教育は糸島市内全中学校で実施されている取り組みです。生徒の進路への関心・意欲を高めるとともに、起業家精神(チャレンジ精神、創造性、探究心等)と起業家的資質(情報収集・分析力、判断力、実行力、 コミュニケーション力等)の育成を目指しています。
前原東中学校の2年生は「地域貢献」を目標に、4月から総合的な学習の時間で、各クラスをひとつの会社と見立てた活動を行うことになりました。
このうち2年6組は「糸島市といえばイチゴ」という連想を足掛かりに、「イチゴの年間廃棄量は全国で192万トン」という事実にたどり着きました。
「食品廃棄を減らしたい」「糸島の農家さんがせっかく育てたイチゴを無駄にしたくない」という思いから、規格外イチゴを加工して販売する活動に取り組むことにしました。売り上げはイチゴの生産費用に充てるため、生産者に還元する方針です。環境や生産者への負担を軽減し、持続可能な生産サイクルを進めていくことは、SDGsの17の目標のうち「12.つくる責任 つかう責任」に通じます。また、地域課題に対して地域で連携しながら取り組むことは、「11.住み続けられるまちづくりを」につながります。
商品化までの壁 選ばれたプロジェクト
まずは6つの班に分かれて、商品のアイデアを考えました。ラングドシャ、香水、琥珀糖、顔パック、イチゴソース、いちごあめの6つの商品アイデアが並びました。しかし、現実は厳しいものでした。ラングドシャは消費期限が短すぎる、香水は薬機法の壁に阻まれる、いちごあめは冷凍イチゴでの生産が不可に―。「自身のプロジェクトが商品化されず悔しい思いをした」と振り返る生徒もいました。
6つの提案のうち、商品化にこぎつけたのはイチゴソースと琥珀糖でした。生徒たちは、ジャムをゆるくした「とろっとうまい」イチゴソースを目指し、プロジェクト名を「Toromai(トロマイ)」に決定し、糸島農業高校の協力を得て、商品化への挑戦が始まりました。

(写真:5月。ビニールハウスでイチゴの収穫作業をする2年6組の生徒たち。)
模擬会社の組織づくりでの学びと成長
商品が決まると、班を解体して会社のような組織づくりを実施。デザイン部、予算部、プレゼン部などの部署を設置し、プロジェクトを進めていきました。
デザイン部では商品ラベルの作成に苦心しました。意見がぶつかることもあり、お互いの案を見せ合って、良いところを組み合わせていきました。デザイン部の生徒は「苦労はしましたが、話し合う力が成長したと思います」と手応えを感じていました。
予算部では、原価計算に頭を悩ませました。商品の販売額を決めるにあたり、原価や経費に関する情報が必要でしたが、先生からなかなか情報が届きませんでした。しかし、予算部長の生徒は「先生は私たちが何の情報を必要としているかを知らなかっただけ」とその原因に気づきました。そして、「言わなくては伝わらないことがあり、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)が重要だ」と実感しました。
プレゼン部は、商品の魅力を伝える方法を考えました。「商品の魅力を相手に理解してもらうためにプレゼン部にできることは何か、良いPR方法はないか、ずっと考えています」とプレゼン部の生徒は言います。学校に対して、環境や生産者に優しい商品を地域で連携して開発するプロジェクトであることをしっかりと伝えて予算を確保するとともに、糸島農業高校の協力も得ることができました。
各部署での活動は楽しいことだけでなく、苦労やもどかしさを感じる場面もありましたが、生徒たちにとってはさまざまな学びと成長の機会となりました。
にぎわう学校バザー、生徒たちの思いが実を結ぶ
令和6年11月9日、前原東中学校のバザーが開催されました。会場となる同校正面玄関前駐車場には、食バザーやゲームなどの10店舗ほどが連なり、生徒や保護者、地域の人などで賑わいました。
例年は部活動主体の店舗ばかりでしたが、令和6年度は起業家教育に取り組んだ各クラスの3つの店舗も加わりました。
1店目は、2年1組と3組が合同で運営するスムージー販売店。地元企業の協力を得て、6組が収穫したイチゴや福岡県産の柿を原材料にしたスムージーを販売しました。2店目は、地域の人たちが前原東中学校に親しみを感じるきっかけづくりを目的に、5組がいろいろなゲームを楽しめる店を運営しました。
2年1組と3組のスムージー販売。キッチンカー内で調理に大忙し。
(左)爽やかなイチゴの酸味VeryBerryスムージー、(右)ミルキーで甘い柿スムージー
そして、3店目が6組のToromaiプロジェクトの店です。メンバー自身でデザインやレイアウトをした自慢の店舗で、イチゴソースと琥珀糖を販売しました。
琥珀糖(左)とイチゴソース(右)。ラベルも生徒がデザイン。
販促ポップも全て生徒たちが手掛ける2年6組Toromaiプロジェクト
「いらっしゃいませ!どれにしましょうか?」
笑顔で接客する生徒たちの軽やかな声が響き渡り、どの店舗も行列ができています。6組Toromaiプロジェクトと1組と3組合同のスムージー販売は、終始客足が途切れることはありませんでした。どちらも完売を達成し、「糸島のイチゴの廃棄を減らしたい」という思いが実を結んだ生徒たちの表情に、笑顔が広がりました。
各クラスの売り上げは、原材料を提供したイチゴ農家への謝礼や校区内の幼稚園・保育園への玩具や絵本の寄贈などに活用することを検討しています。
子どもたちの声
(写真:左からプレゼン部長、予算部長、プロジェクトリーダー)
- プロジェクトリーダー:商品の仕入れのことを学んだり、加工の現場を見たりして、普段学校ではできないような経験ができました。また、学校内外のいろいろな人と協力しながらプロジェクトを進めることで、人とのコミュニケーション能力がアップしたと思います。このプロジェクトを進めていくこと自体が地域活性化につながっていると感じ、やりがいがありました。
- 予算部長: 手に取りやすい商品にするために、価格や容量などを考えるところに面白味を感じました。会社ってこういうものなのかなと体感できました。
- プレゼン部長: 普通の中学生では経験できないようなことの連続でした。いずれ自分たちにも働く機会が来ます。組織で働くことを意識して活動することで、将来の選択肢が広がった気がします。また、地域の方々と連携しながら地域課題の解決に取り組むことで、「自分たちもSDGsに貢献している」という感覚が芽生えました。
先生インタビュー
学年主任の篠原先生、2年6組担任の安永先生に話を聞きました。
(写真:2年6組担任の安永先生(左)、学年主任の篠原先生(右))
今回の授業のねらいを教えてください。
- 最も重視したのは、生徒たちの主体性を引き出すことです。起業家教育は1年生の時からスタートしました。糸島の起業家の講話を聴き、起業したきっかけや起業するにあたって必要な事、心構えを学ぶところから始めました。
今回の授業を含め、どのような実施計画になっていますか。
- 2年生では、各クラスで模擬会社を設立し、それぞれの会社が独自の事業を展開していく計画です。毎週木曜日5・6限の総合的な学習の時間に取り組んでいます。
今年度は、商品を販売して売り上げを地域に還元するという目的を設定して取り組みました。原材料となるイチゴの提供を校区内のイチゴ農家さん、イチゴの冷凍保存および商品の製造を糸島農業高校にご協力いただき、それ以外の企画から販売までを本校の生徒が行いました。
実行する上で困ったことはありましたか。
- 企画から販売までを一貫して行うことで、子どもたちは充実感や達成感を得ると同時に、情報共有の難しさ、発案したものがうまく商品化できないもどかしさなども実感したと思います。しかし、そういった困難もトライアンドエラーの精神で乗り越えています。
また、授業内の限られた時間の中で、仕入先や協力先と連携を図りながら進めていくことが大変でした。しかし、どの方も快く応じていただき感謝しています。
生徒の成長について、どのように感じていますか。
- 学校側が促さずとも、生徒たちは個人的な「やりたい」だけを追求することなく、チームとしての活動を意識できていました。あれもしたい、これもしたい、すごいな、面白いなと、どんどん自身のアイデアを実行に移していきました。教師の予想を遥かに上回る彼らのパワーに驚きを隠せません。
- 販売して利益をあげるという明確な目的ができたことも、生徒たちの意気込みが増し、取り組む姿勢の勢いにつながったと感じました。失敗を恐れずチャレンジする精神や、チームで協力して物事を進める力が育っていると実感しています。
- 模擬会社設立から販売まで行ったのは今年度が初めてですが、次年度も同様に販売を見据えた取り組みとしていきたいと考えています。
関係者インタビュー
原材料を提供したイチゴ農家の笠さんに話を聞きました。
(写真:イチゴ農家の笠さん夫妻)
どのような思いで協力をしましたか
- 同じ地域の中学校のお願いということで、まず頼られたことがうれしく、中学生の取り組みのお手伝いができるなら何でもしようという気持ちでした。「うちのイチゴで良いならどれだけでも持っていって」と提供しました。5月のビニールハウスで、汗をたくさんかきながら収穫作業をしていた生徒たちの姿が懐かしいです。とても立派な商品ができましたね。中学生がここまでやれるなんて思ってもみませんでした。驚いています。