田川基成写真展「見果てぬ海」　インタビュー

日本写真協会新人賞受賞！　壮大なスケールで歴史を写す

今回は7月13日（水曜日）から7月24日（日曜日）まで開催されている＜田川基成写真展「見果てぬ海」＞をインタビューさせていただきました。
長崎県の離島出身で市内在住の写真家・田川基成氏が、長崎の海と島々を約4年にわたって巡り撮影した、約40点の作品を展示しています。

入場料は500円。会場内は写真撮影OKとなっており、写真集『見果てぬ海』の閲覧もできます。

故郷長崎の豊かな風景を歴史的な視点で捉えたスケールの大きさが評価され、日本写真協会から賞を受けた作品展の成り立ちを、田川さんに聞いてみました。
 

きっかけは1年間のブラジル、南米旅行。アマゾン川、ペルー、アンデス山脈の村、チリの島々をめぐる中で、海辺や山に教会があり、その姿が長崎の教会に似ていると感じたそうです。
「南米も長崎も、大航海時代にスペイン・ポルトガルがキリスト教を布教し歴史が共通する。地球の反対側なのに―――」そんな気づきから、故郷・長崎の歴史に改めて興味を持ち、地域や歴史を写真に撮ろうと思ったとのこと。

制作を始めた当時は東京に住んでいましたが、撮影のために長崎や五島に一週間滞在するということを20回くらい繰り返したそうで、撮影期間は4年間。自分の故郷の長崎の海をテーマに、長期間集中して撮影しただけに、強い思い入れがあると語ってくれました。
 

 
長崎は、仏教と、カトリックと、隠れキリシタンという3つの信仰を持つ集落がモザイク状に分布していて、同じ島、同じ地域に、信仰する宗教だけが違う人々が集まっていることが分かるよう意識して構成されているとのこと。
奥にある小展示室はカトリックに焦点を当て、宗教行事や信者の方の生活、その息遣いが伝わる写真が並びます。
 

そんな話を聞いていると、観覧のお客さんからも質問が飛びます。
「潜伏キリシタンと隠れキリシタンはどう違うのでしょうか？」
明治以前まで隠れてカトリックを信仰していた方々を総称して「潜伏キリシタン」と呼ばれ、明治を境に、カトリックに復帰した人々と、復帰せずに集落独自の信仰を続けた人々に分かれたのです。
後者の人々が現在「隠れキリシタン」と呼ばれ、宣教師も神父もいない状態で、村の中で独自の宗教観を形成しているんです。―――と、すらすらと答える田川さん。
お客さんはますます興味津々で、写真を囲んで、まるで人気の講座のような盛り上がりです。



「この建物は？」「教会です」「へー教会！？公民館かと思った」
中はこうなっているんですよ、と隣の写真を紹介する田川さん。
外装とはうって変わった荘厳な雰囲気に、「外からは分からんもんやねー」と感心しきり。

あらためて、この展示で伝えたいことを伺いました。
「長崎の海の世界のことを伝えたい。範囲は狭いが、狭い範囲にいろんな文化が入り組み、残っている。3つの信仰が同じ地域の中に共存している。その風景、文化をじっくり見てほしい。」

今は北海道に通って撮影を続けているとのこと。また、せっかく福岡にいるので、朝鮮半島と九州北西部の間で揺れ動いた対馬を撮りたいと思い、近いうちに通うことを検討されているそうです。

＜田川基成写真展「見果てぬ海」＞ は7月24日（日曜日）まで。ぜひ伊都郷土美術館までお越しください。

8月は2日から「子どもアート教室作品展」、17日から「企画展『近代洋画壇を支えた画家たち』」が開催され、インタビューやイベントレポートを予定しています。 どうぞお楽しみに！