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「末吉玲泉 南画展」インタビュー
更新日:2022年12月1日
南画に魅せられて―――「理想郷」目指して歩む作品展
今回は11月30日(水曜日)から12月4日(日曜日)まで開催されている「末吉玲泉 南画展」をインタビューさせていただきました。
末吉 玲泉さんは「親子で水墨画一日体験教室」にお子さんと参加したことがきっかけで南画と出会い、当時お住まいであった長崎の市や県の美術展などに出品を続けています。
まず、南画について末吉さんに詳しくお話を伺ってみました。
南画は、元々中国の文人画(職業画家ではない人が趣味として描いた水墨画)が、長崎から日本に入ってきて伝統として定着したものです。そのため、発祥地の長崎では伝統として大切にされているそうです。
水墨画との違いはよく聞かれるそうですが、大まかには、墨だけで描いていれば水墨画と考えてよいそうです。
南画は、色を使うことが特徴で、絵具は日本画用の顔彩を使います。また、「画賛」という絵に合った言葉を付けることが多いそうです。
「今は、身近な自然の物の見たままを、南画の技法で描くのが楽しい」と語る末吉さん。
南画の技法は、「四君子」と呼ばれる文人画の大事な題材「蘭、竹、菊、梅」を繰り返し描くことで磨かれる曲線、直線、墨の濃淡、遠近感。中でも墨の濃淡は、和紙にじわっと染み込む偶然的な要素がありながら、うまくいくと濃淡を自分で操作できる面白さがあるとのこと。
上の作品では、微妙な濃淡で葉っぱの瑞々しい色合いを表現しています。「こういうのが出るとうれしい」と末吉さん。
奥の小展示室の一角には、末吉さんが指導を仰ぐ先生お二人の作品が飾られています。
このような山水画では、見たものをそのままではなく、作者が抱く「理想郷」が描かれていて、南画においても大事な「精神性」を体現しているそうです。
似た構図ながら、片や静寂、片や迫力と真逆の印象を受け、南画の奥の深さを感じました。
今後の活動についてお伺いしたところ、今後も自然のものを描けるときに描いていくほか、「長崎おくんちが大好きで、撮りためた写真をもとに描いてみたい」とも教えてくれました。
南画の魅力とともに、その文化を大切に育んだ長崎のすがたが、この伊都郷土美術館にまた飾られる日が楽しみです。「末吉玲泉 南画展」は12月4日(日曜日)まで。ぜひ、当美術館にお越しください。