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平成27年度10月号
更新日:2015年2月15日
松尾海山書展『左手線の世界』 脳梗塞などに負けられません を見て
9月11日から13日まで松尾海山書展『左手線の世界』 脳梗塞などに負けられませんが開催された。
個展主の松尾海山先生は、6年前に脳梗塞になり右半身麻痺の後遺症が出た。
以前から書を趣味・生きがいとし、個展を開いたり人に教えたりしながら充実した生活を送られていた松尾海山先生。
しかし、突然の病に利き手を動かすことができなくなっただけでなく、書という生きる希望まで失ってしまった。
書を失った先生は「右手が駄目なら左手がある」と自らを奮い立たせ、リハビリをかねて左手で再び書に挑戦していった。
再び個展を開くまでは簡単なことではなかった。筋力の衰え等さまざまな困難が立ちふさがった。
それでも先生は持ち前の強い精神力と忍耐力を発揮し、利き手でない左手の筋肉を鍛え、悪戦苦闘を続けながら書を書き続け、
今回、多くの人の支えと励ましを受けながら個展を開くことになった。
個展で展示された書の数々は、力強い迫力と躍動感、「右手が駄目なら左手がある」「筋力の衰えは気力で」との気構えがそれぞれの作品に乗り移っているようであった。
また、体の回復は遅々とした状態でありながら力の落ちた左手に筆を握りしめ、痛さに耐えながら書かれた作品の素晴らしさは見る人を感動させた。
同じ病の方々だけでなく、生きている全ての方に対する励ましのメッセージとなり、書に込められたエネルギーと可能性を教えてくれている個展であった。
平成27年10月 糸島美術協会 望月暢一