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#1「卵」で糸島の未来に貢献 【糸島しごと】

更新日:2024年2月13日

#1 「卵」で糸島の未来に貢献

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【記事(PDF版)はこちら】(PDF:1MB)

早瀬憲一さん
 Hayase kenichi

有限会社 緑の農園  代表取締役

1988年、志摩町(現・糸島市)生まれ。養鶏業を営む両親のもとに生まれ、東京農業大学を卒業後、2011年に家業である「有限会社 緑の農園」に入社。店長などを経て、2018年から同社の代表を務める。

有限会社 緑の農園 (企業情報はこちら)


糸島のブランド卵として数々のメディアに登場し、濃厚なおいしさで全国にファンがいる「つまんでご卵」。このブランド卵を生み出したのは、糸島市の志摩桜井地区で農場と直売店、ケーキ工房を展開する有限会社緑の農園だ。

 2018年から同社の代表を務める早瀬憲一さんが、創業者である父親から代表を受け継いだのは30歳のとき。「子どもの頃からうちの仕事を誇りに思い、将来はぜひ跡を継ぎたいと思っていました」と、親しみやすい笑顔でエネルギッシュに語る。「子どものために、未来のために」を経営理念に掲げる早瀬さんに、会社が紡いできた物語や仕事のこと、地元糸島への思いを聞いた。


長年の夢だった養鶏業を始めるため糸島に移住


早瀬さんのお父様が1989年に桜井地区で養鶏場を開き、緑の農園を創業されたとのこと。どんな経緯があったのでしょうか?



父は岐阜生まれの東京育ちで、幼い頃に祖母が自宅の庭で鶏を放し飼いにしていて、毎朝、祖母と卵を探すのが楽しみだったそうです。それで鶏がとても好きになり、東京農業大学で鶏について研究し、一時期は「鳥飼ケンタロー」のペンネームで漫画家をしていたことも。

その後、養鶏の商社に勤めていたのですが、免疫異常からくる慢性腎不全という病気のためにサラリーマン生活を続けられなくなりました。そこで思い切って長年の夢だった養鶏をしようと、母の実家のある福岡市からほど近い糸島に移住してきたそうです。

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鶏たちはゆったりした空間でのびのびと過ごす



縁のない糸島で養鶏を始められて、ご苦労もあったのでは。



地元の人からすると私たちはよそ者で、しかも養鶏は臭いがしてうるさいのではと懸念があったようです。それで父は1000羽飼いたかったけれど、地元の人と話して200羽から始めたと。実際には平飼いでストレスのない環境なので、鶏の臭いも鳴き声もなく、ハエもいないと認めてもらい、今では8500羽まで増えています。

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緑豊かな志摩桜井にある8棟の鶏舎



「つまんでご卵」は福岡だけでなく広く知られています。どうやってブランド化されたのでしょう?



養鶏を始めた当初は、「志摩の自然卵」と呼んでいたのですが、3年ほど経ってテレビが取材に来てくれたとき、父がふと黄味をつまめるのではないかと思い、母が指でつまんでみたら見事に成功。3日電話が鳴りやまないほどの反響で、「つまんでご卵」というネーミングにしたそうです。

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「卵特有の生臭さがなく、濃厚な味わいです」と早瀬さん

楽しく働く両親の背中を追い30歳で社長に


 早瀬さんは跡を継ぐと意識されていましたか?



はい、幼いときから両親が鶏に愛情を持って働く姿を見て育ち、父は知人から「早瀬さん、いい養鶏してるね」と言われ、私も友達から「卵がおいしい」「テレビに出てすごい」と褒められていました。だから、自分もぜひ養鶏をしたいと中学生の頃に進路を決めました。父と同じ大学で養鶏を学び、卒業後に実家で働き始めました。

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直売店「にぎやかな春」。週末は市内外からの多くの人でにぎわう。つまんでご卵と糸島の牛乳「伊都物語」を使ったソフトクリームが人気



30歳の若さで代表になり、心がけてきたことは?



父が元気なうちに代表を交代する方針で、創業30年で私が30歳の節目に、私は代表、父は会長職に就きました。父にはカリスマ性やリーダーシップがあり、私はまわりの人から「2代目は苦労する」「親父を超えろ」とよく言われたものの、超えるという基準もなく、私は「父と並び称される人間になろう」というスタンスで仕事をしてきました。

20代の頃から一流企業の経営層が集まる関東の勉強会に参加させてもらい、天狗になりそうなとき、「自分が偉いと勘違いしてはいけない」と大先輩に諭されたことは心に刻んでいます。

「ありがとう」と喜ばれることがやりがい


 現在の会社の状況を教えてください。



大きく3つの部門があります。まず生産部門では、つまんでご卵を年間200万個ほど生産し、小売店と飲食店、個人向けに販売しています。お客様は全国に広がっていて、リピーターが8割。鶏肉は「万歩鶏(まんぽけい)」として販売しています。

2つ目は直売店「にぎやかな春」です。自社の卵や鶏肉のほか、無添加の加工品や減農薬の野菜など、体に優しい自然食品をそろえています。父が病気を経験したからこそ、人一倍健康にこだわった食品を集めています。店内飲食とバーベキューコーナーも併設しています。

そして、2008年に開業した「つまんでご卵ケーキ工房」では、国産無農薬栽培石臼挽き小麦粉とつまんでご卵といったこだわりの材料で、ロールケーキなどのお菓子を作っています。

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隣接する「つまんでご卵ケーキ工房」にはイートインスペースもある



早瀬さんは、全体をマネジメントされているのですね。



現場に入ることもありますが、基本的には会社運営が私の仕事です。今は生産10名、直売店10名、ケーキ工房10名の体制で、現場の声を聞きながら運営しています。高校新卒で入社した10代から70代の方まで働く人の年齢層は幅広く、皆さんとてもいい方ばかりです。私が入社して13年、代表になって5年経ちますが、逆境にさらされたことがなく業績は順調で、毎日楽しく働いています。もちろん鳥インフルや台風などの怖さはありますが、それを見越して備えをして、経営計画も立てています。父の代で研究して養鶏はほぼ完成形になっていますし、両親がいい社風を作ってくれたおかげでまわりの人にも恵まれて、ありがたく思っています。

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スタッフは早瀬さんを
「とても真面目ですよ」と評する



早瀬さんにとって家業はどんな存在で、仕事のどんなところにやりがいを感じますか?



家業は「誇り」です。子どもの頃からたくさんの人に「おいしい」と喜んでもらえるのがうれしくて、誇らしかったので。

1番のやりがいは、お客様から「ありがとう」と言ってもらえること。うちの卵は市場の卵の2~3倍するのに、お客様が買ってくれて「こんなにおいしい卵をありがとう」「贈り物にしたらすごく喜ばれたよ、ありがとう」と声をかけてもらえて、いつも感激します。コロナ禍で飲食店への出荷が95%減だったときは、個人のお客様が支えてくれました。「大変やろうけど、ここの卵を食べたら他のは食べられんけん、ずっと続けてね」と。飲食店が復活したときも、資金繰りが大変なはずなのに、「つまんでご卵じゃないとうちの料理はできないから」と真っ先に注文してくださって…生産者冥利に尽きます。

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「お客様からいただく言葉と笑顔が励みになります」と早瀬さん


「足場を固めるプライド期」の糸島で自分の役割を果たしたい


早瀬さんにとって、糸島で暮らし働くことの魅力や意義について教えてください。



糸島は稀有なエリアだと感じています。2010年に糸島市が誕生した頃から、メディアなどで一気に話題になり、お客さんがたくさん来てくれるようになりました。行政が盛り上げたのではなく、民間がそれぞれ頑張って、何となく「糸島はすごい」というイメージが出来上がって。その後は糸島とつければ売れるというひどい便乗期を経て、今こそ足場を固めるプライド期に来ていると思います。私より少し上の先輩で、糸島の強みを生かした商品やサービスを展開し、糸島を背負っていこうとさまざまな活動を頑張っている人が増えています。それがまだ点と点で、少し線になってきていて、これから面になり立体になることで、一体的に強固な糸島ブランドができるのではないでしょうか。


早瀬さんはどんな役割を担おうとお考えですか?



地域の未来を考えることは、地場産業の重要な役割の一つだと思います。雇用面はもちろんですが、うちの会社は経営理念に「子どものために、未来のために」と掲げていて、地域の子どものことを考えたい。私自身、この地域に育ててもらったので。例えば、社会見学でうちに来てくれた子どもたちの感受性を豊かにしたいし、糸島はそういうことに適した地域で、もっと積極的に地域と学校が連携できるといいなと思っています。共に糸島地域の未来を考えている先輩たちのサポートもしていきたいです。

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「これまで仕事で苦労したことや嫌なことは本当
にないんですよ」と早瀬さんはいつも前向きだ



素晴らしい思いですね。最後に会社の展望を教えてください。



やはり会社としては売上を上げて、従業員の給与を上げたい。そのために、社内で未活用の資源を見直しています。例えば、ケーキ工房は生産能力を伸ばせるので、コロナでとん挫していた外販の動きを進めて、養鶏でも何か派生してできることがないか検討しています。

また、従業員が会社に誇りを持って働き、お子さんが自分の父母がうちの会社で働いていることを喜び自慢してくれる会社になることも大きな目標です。働く親のモチベーションにもつながりますから。

そして以前、東南アジアへ視察に行き、日本のものや技術の需要は確実にあると感じました。今後、日本のマーケットが縮小していく中でも、子どもたちが日本の食を誇りに思えるように、海外でできることも模索していきたいです。



早瀬さんの言葉の端々から、家業に誇りを持ち、自らと会社を育ててくれた糸島に恩返ししたいという熱い思いが伝わる。糸島発のブランド卵で名を馳せる同社は、今後どのように進化していくのだろうか。

 

(2023年11月取材、文=佐々木恵美 写真=渡邊精二)



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